「早起きすれば」に市民爆発 中間層が消えて起きたこと

有料記事特派員リポート

サンティアゴ=沢村亙
[PR]

 かつて色とりどりの花が植えられていたサンティアゴ旧市街のイタリア広場では、白茶けた地肌を真夏の日差しが照りつけていた。破壊され、閉鎖された地下鉄駅の入り口に、黒い装束の6人の若い女性が現れた。

 「ここで起きた人権侵害をアートで表現したい」。大学で舞踊を学ぶという女性たちは、ろうそくを置いたガラス片をそれぞれ抱え、静かに舞い始めた。

 昨年10月25日、広場には約100万人の市民が政府に抗議して集まった。それ以来、チリ各地で市民による抗議デモと治安当局による鎮圧の嵐が吹き荒れた。便乗した暴動や略奪も広がった。

 大規模デモから約3カ月の1月半ば、多くのホテルや店の正面が放火で焼けただれ、建物という建物に落書きが残る首都サンティアゴの旧市街を歩いた。

 広場の中心に立つ19世紀の軍の英雄の像のたもとに30人ほどの若者が陣取っていた。「僕らの主張を政府が受け入れるまで、ここを動かない」。19歳の若者は言った。

 そばで顔を布で隠した少女が垂れ幕を掲げていた。「私は自分の顔を隠している。だが、おまえは真実を隠している」。通りかかった車が呼応するようにクラクションを鳴らしていく。「この国のひどい教育、医療、年金の問題を、政府は隠している」。15歳だという少女は「警察に連行されるのでは。ゴム弾で失明するのではないか。そう思うと怖いけど、ここに立ち続ける」とも語った。

 警察の装甲車両が広場に入ってくるのが見えた。若者たちは興奮して叫び、警察車両に投石を始めた。装甲車両の放水銃から水しぶきが上がる。催涙ガスだろうか。白っぽい煙が風になびいた。

 広場の横に白いヘルメットをかぶった人々がいる。医療ボランティアたちが設営した救護所だった。警察は放水する水に化学物質を混ぜているのではないか。彼らはそう疑っていた。「やけどのような症状を訴える人がいる」

 突然、顔を血だらけにした男性が救護所に駆け込んできた。

 15歳の少女と一緒に垂れ幕…

この記事は有料記事です。残り3540文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら