黙殺されたSOS ケースワーカーが一線を越えるまで

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向井光真
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 昨年6月、あるケースワーカーが一線を越えた。担当する生活保護受給者からほぼ毎日、何時間も電話がかかってきた。要求に「応じなければ殺される」と思うようになった。どんな経緯があったのか――。死体遺棄罪で起訴された京都府向日市のケースワーカー、余根田渉被告(30)が、自らの刑事裁判で語った内容はこうだ。

 念願の公務員になったのは8年前。市民参画の仕事を3年ほどした後、生活保護受給者のケースワーカーになった。

 異変が起きたのは、2018年秋ごろ。ある受給者から、業務時間の内外を問わずに電話がかかってくるようになった。「家主から追い出されたことにするから、転居費用を出してくれ」「眼鏡が壊れたから、すぐに作らせろ」。平日は毎日、役所に何度も電話があり、2時間以上続いた。対応に半日かかったこともあった。

 内容はエスカレートしていった。「出会い系アプリの使い方を教えろ」「公用車で荷物を運べ」。生活保護業務と関係のない要求が増えていった。「できないことはできない」。そう断ったが、暴力団との関係をほのめかされた。上司に電話を代わっても、最後は自分に電話が回ってきた。「上司もおまえの非を認めている」と責められた。

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 「自分の席の電話が鳴るだけ…

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