天国があると信じ、少女が超えた一線 シリアで見た地獄

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ジャカルタ=野上英文
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 イスラム過激派組織「イスラム国」(IS)に憧れてシリアに渡った後、祖国インドネシアに命からがら帰ってきた家族がいる。はるか中東へなぜ向かったのか。いま何を思うのか。(ジャカルタ=野上英文)

 ジャカルタ近郊の飲食店に現れた母と娘2人に話を聞いた。イスラム教徒の一家は2015年8月から2年間、シリアのIS支配地域で暮らした。

 きっかけは次女のヌル・ダニアさん(21)。高校2年で成績が下がり、将来に悩む中、おじからニュースを聞いた。「イスラム教の開祖ムハンマドの死後に始まり、その後滅んだカリフ(後継者)制をISが再興しようとしている」

 スマホで検索を始めるとやめられなくなった。SNSなどを通じ、面識のない相手からも情報を得た。「住居や医療、教育の全てが無料」「望み通りの人生になる」。ダニアさんは医学校に通う夢を描いた。「ISは天国。神からの贈り物だ」

 一緒に行こうと家族を説得し始めた。母のラトナ・ニルマラさん(53)は当初、思春期の悩みだと相手にしなかった。

 ある日、ダニアさんから渡された手紙はIS行きを手伝うブローカーについて書かれていた。母は叱った。「二度と関わらないで!」。ダニアさんは家を飛び出し、数日帰らなかった。「高校をやめる。シリアにどうしても行きたい」

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