トイレで母乳を捨てるむなしさ 日本のカイシャは「ならない」だらけ

有料記事カイシャで生きる

編集委員・中島隆
[PR]

 日本の会社で働くみなさん。

 その長い時間の会議、必要ありますか?

 全員集合、必要ですか?

 最後まで会議室にいなくっちゃいけませんか?

 会議に出るためにモチベーションが下がっている人、いませんか?

 どこにいたって会議には参加できます。ITがあるのですから。新型コロナウイルスのせいでテレワークを強いられている人の中には、そんな「発見」をした方もいるのではないでしょうか。

 会議の内容を後で知ればいい人も、いるはずです。

 その会議、そもそも必要ですか?

 日本の会社で働くみなさん。

 社内メールを出すとき「お疲れ様です」とか「よろしくお願いします」とか書きますよね。

 宛先の肩書を間違えるなどもってのほか。複数の人にメールを送るときの「序列」にも細心の注意を払いますよね。

 失礼があったらまずいというお気遣い、お疲れ様です。

 でも、面倒くさくありませんか。時間がかかりませんか。ふつうの会話のようなやりとりができるチャットで、ササッとすませた方が簡単ですよね。

 仕事からムダをなくせば生産性が上がります。会社の束縛しすぎから解放され、社員の生活が充実します。

 Smart Work Smart Life!

 そう訴え、日本企業にチャットやAI(人工知能)分析などのサービスを提供している会社があります。

 原田典子さん(45)が2015年に東京でつくった「AI CROSS」という会社です。

 「カイシャで生きる」。今回は、原田さんの人生すごろくです。

 小学5年生、11歳のときに西ドイツへ。日本人学校を経てインターナショナルスクールに通う。アメリカ、スウェーデンフランス、韓国。さまざまな国から来た子どもたちと学ぶ。私は日本人、それを痛烈に感じる日々だった。焦土となった敗戦から復興してきたことが誇らしかった。

 中学3年のときの修学旅行。バスでベルリンの壁の向こうに行った。東ベルリンは、どんよりと暗かった。街の人たちは原田さんたちを動物園の動物を見るような目で見ている、そんな感じがした。

 ほどなくして、ベルリンの壁が崩壊する。お祭り騒ぎになる。東西ドイツが、ひとつのドイツになる。

 原田さんは思った。

 〈ずーっと続くものはない。変わるんだ。変えることができるんだ〉

 小中高とドイツで過ごしたので、日本の学校に行きたいと考えた。慶応大の経済学部に進む。数学や物理が得意だったので、ITの可能性を感じた。世界的に知られるドイツ系のIT会社、その日本法人に入社した。

 担当は、カスタマーサポートとコンサルタント。世界共通のシステム、ソフトを売って回る。日本の企業からは、カスタマイズの嵐。つまり「うちの会社に合うように改良して」という要望の連続だ。

 新人の原田さん、要望を聞く。お客が何を言っているのか、ちんぷんかんぷん。分かっているふりをして、ひたすらメモを取る。会社に戻って先輩に聞いたり、自分で調べたり。会社に寝泊まりし、土日もなかった。

 No Pain No Gain

 (痛みがなければ、結果は得られない)

 そんな思いで、ただただ働いた。1年で同期の半分が辞めていった。原田さんの心の支えは、日本で対応できないときはドイツの本社に行けるうれしさだった。

 働き始めて3年近くたち、こう考えるようになった。

ここから続き

 〈アメリカのITって、もっ…

この記事は有料記事です。残り2293文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら