「尋常では考えられない陰湿な虐待」父に懲役16年判決

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今泉奏 小木雄太 佐藤瑞季 多田晃子 松本江里加
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 千葉県野田市で昨年1月、小学4年の栗原心愛(みあ)さん(当時10)を虐待して死亡させたとして傷害致死罪などに問われた父親の勇一郎被告(42)の裁判員裁判で、千葉地裁は19日、懲役16年(求刑懲役18年)の判決を言い渡した。前田巌裁判長は「尋常では考えられないほどに凄惨(せいさん)な虐待だった」と指摘。死者1人の傷害致死罪では「最も重い部類だ」と述べた。

 判決は、虐待が長期間に及んでいることや、徹底的な支配で肉体的にも精神的にも追い詰めていたことを挙げ「先例の量刑傾向を大きく超える極めて悪質性の高い事案」と結論づけた。

 判決によると、被告は昨年1月22~24日、心愛さんに食事や睡眠をとらせず、ぬれた肌着姿で浴室に立たせ、シャワーで冷水を浴びせ続けるなどして死亡させた。被告が否認していた、2017年11月に心愛さんが小学校のアンケートで暴力を訴えた暴行罪について、判決は「(心愛さんは)身に起こったことをありのまま精いっぱい伝えようとしていた」と認めた。公判で被告が反論していた点は、妻や解剖医の証言などをもとに「被告の供述は脈絡がない不自然なもの」などとして、起訴された六つの罪を全面的に認めた。

 被告が否定していた虐待の日常性についても「長期にわたり虐待を繰り返した」と認定。心愛さんが亡くなるまでの経緯については「虐待をエスカレートさせ、強い恐怖心を与えるとともに人格と尊厳をも全否定した。傷害致死の犯行はその行き着く果てだった」と述べた。

 18年7月に心愛さんに便を持たせて撮影した強要罪は「恥辱と屈辱以外の何物でもない」と指摘。証拠の動画などから、心愛さんは直前に30分近く屈伸を繰り返すよう強いられたとし「虐待を受けて極度に畏怖(いふ)していたのに乗じた」と述べた。

 心愛さんは虐待を逃れようと学校や被告の実家で助けを求め、被告と離れて暮らすこともあった。だが、その度に自宅に連れ戻された。判決は「助けてもらえず、理不尽極まりない虐待を受け続け、絶命した悲しみや無念さは察するにあまりある」とした。

 被告は9日に接見した朝日新聞の取材に「裁判では事実しか話していない」と語っていた。この時点では「控訴まではまだ考えていない。子どもに対して償いをしないといけない気持ちが多い」と話していた。

 被告の妻(33)は虐待を手助けしたとして傷害幇助(ほうじょ)罪に問われ、懲役2年6カ月保護観察付き執行猶予5年の判決が確定している。判決では、被告の妻に対する暴行罪も認めた。

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     ◇(今泉奏、小木雄…

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