コロナショック抑え切れぬ金融緩和 日銀の打ち手に失望

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ワシントン=青山直篤 ニューヨーク=江渕崇 湯地正裕 鈴木友里子 ワシントン=渡辺丘 ニューヨーク=藤原学思 ベルリン=野島淳
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 日米の中央銀行が相次いで異例の金融緩和に踏み切り、お金の流れを緩めた。ただ、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、世界各地で人やモノの動きが止まって経済活動が縮こまっている。その姿を見透かすように、16日の日経平均株価追加緩和を決めても下げる異例の値動きとなった。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は米国時間15日夕(日本時間16日朝)、異例の利下げに踏み切った。日欧などの中央銀行と協調し、ドル資金を融通し合う協定を通じて世界の金融機関がドルでより円滑に資金繰りできるようにする。

 日本などの市場で週明けの取引が始まる直前で、関係者が驚くタイミング。FRBのパウエル議長は15日の電話会見で「今後の影響は感染がどれだけ広がるかに依存し、どれだけ続くかはわからない」と述べ、ゼロ金利を「(危機を)乗り越えたと確信できるまで続ける」と予告した。ドルは基軸通貨のため、「海外でのドルの資金繰りの緊張が、米国でも金融環境の混乱をもたらしかねない」と危機感を強調した。

 当初は17~18日の定例会合での大幅な利下げが見込まれていた。しかし、パウエル氏によると、米株価が急落した12日に会合前倒しを決めた。背景にあるのは、経済活動が急激に滞って世界や米国のお金の流れが急激に細り、信用不安が広がるとの危機感だ。資金の目詰まりが金融システム全体に波及しかねない。

 FRBはリーマン・ショック後、利下げに加え、3次の「量的緩和」で市場にお金を流し続けた。その後の「正常化」過程で2017年10月~19年8月には保有資産を縮小。しかし、トランプ米大統領は米中貿易摩擦を激化させた18年以降、米経済が好調でもFRBへの露骨な利下げ要求を繰り返すようになり、金融市場も緩和を求めた。FRBは昨年10月までに3会合連続で利下げし、今回の決定で「ゼロ金利政策」に逆戻り。トランプ氏は15日の会見で利下げに触れ、「とても幸せだ。市場の人びとはとても興奮するだろう」と述べた。

 パウエル氏はゼロ金利に到達したことによる政策の限界について会見で問われると、「流動性対策を中心に、我々の政策手段の余地はまだたくさんある」と強調。「量的緩和」を拡大することをほのめかした。

 各地で感染が拡大し、FRB以外でもイングランド銀行やカナダ銀行など先進国の中銀が3月以降相次いで利下げに踏み切った。ただ、緩和策は金融市場の動揺を抑え切れていない。ニューヨーク大学のヌリエル・ルービニ教授は15日、ツイッターにこう書き込んだ。「バズーカ砲のような巨額の財政出動がなければ、金融政策は無力だ」。16日の米株価は大幅下落で取引が始まった。(ワシントン=青山直篤、ニューヨーク=江渕崇

日銀に失望「緩和やっている感」

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