かつてアジアやオセアニアの若手のバレエダンサーにとって、毎年2月にスイスで開かれるローザンヌ国際バレエコンクールだけが世界、欧州へ羽ばたく唯一の扉だった。熊川哲也さんに、吉田都さん……。「ローザンヌ」は多くの日本人スターダンサーを輩出してきた。近年は留学先も増え、その意味合いは変わりつつあるが、今も「特別な場所」であることに変わりはない。その魅力をあらためて探った。
生活費も含めて支援
今年の参加者は77人。このうち日本人は12人で、オーストラリアからの参加者と並んで最多だったが、うち7人は既に海外のバレエ学校に留学し、そこからコンクールに参加した。
「ダンスマガジン」の鈴木和加子編集長は「ローザンヌ」を「良いバレエ団に就職するためのジョブオーディション(就活)の意味合いが強くなっている」と分析する。確かに、今となっては「若手の登竜門の一つに過ぎない」と指摘する声もある。
一方で、「どんなに貧しい子でもバレエ学校に行かせられるように。留学先での生活費まで面倒を見るスポンサーがつく『ローザンヌ』は、他のコンクールとは全然違う」と断言する声も。15年にわたり日本からの参加者に同行している旅行会社マネジャーの杉上道子さんは、コンクールに「篤志家の精神が生き続けている」と話す。
貧しくとも、今は粗削りでも、心の強さや身体能力など、原石の輝きを見いだして導く。「ローザンヌ」の存在感の源は、そこにあるのかもしれない。
国ぐるみで育成する中国
また、近年はアジア勢の活躍が目ざましく、今回決選に進んだ21人のうち6人が中国・香港から、2人が韓国からの参加者だった。現地でコンクールを鑑賞した元英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団ファーストソリストの山本康介さんは「審査は妥当。中国勢の技術的水準の高さに驚いた」と話す。
新型コロナウイルスの影響で…
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