震災翌日、インターホンを鳴らした少年「電話を貸して」

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荻原千明
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 あいつにもうすぐ後輩ができる。そんな想像を膨らませていた春先の午後だった。

 東京・池袋のオフィスで、渡辺雅和さん(52)=東京都杉並区=は、ドンッという衝撃にパソコンを打つ手を止めた。机の下にもぐりこむと、キャスター付きのイスが傾いた床を滑っていくのが見えた。

 次男の携帯を鳴らしたが、コール音さえ響かなかった。

 「バドミントンで五輪に出る」。そう宣言し親元を離れた次男は、福島県富岡町の中学に通っていた。海まで1キロもない。テレビが映し出す日本地図は、津波の警報で真っ赤に染まっていた。「迎えに行きます」。会社を飛び出そうとすると、上司に止められた。

 翌3月12日、自宅リビング。渡辺さんは携帯を握りしめたまま、テレビを食い入るように見つめていた。午後になって、何十時間ぶりかに着信音が響いた。

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 「お父さん、安心して」…

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