人には絶望から立ち直る力がある 被災地と歩んだ25年

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聞き手・浜田奈美
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 「どないしてる?」。そんな声かけで阪神・淡路大震災の被災者たちを訪ね、元気づけてきたNPO法人「よろず相談室」。その代表で元高校教師の牧秀一さん(70)が、3月末で引退する。発災直後から25年もの間、被災者に寄り添い続けられたのは、なぜだろう。東日本大震災など各地の被災地に向けた「伝言」を聞いた。

 ――阪神大震災の発生直後から25年間、被災者支援を続けてきた「よろず相談室」の活動を若手に任せ、引退なさるそうですね。

 「こんなに長く続けるつもり、なかったんですよ。気づけば70歳。立派な高齢者ですわ」

 「僕らの活動は、災害復興住宅に暮らす高齢者の戸別訪問です。震災翌年から孤独死や自殺を防ごうと仮設住宅を回り始めて、復興住宅が出来てからは130世帯を月に1回、訪問してきました。25年の間に多くの方が亡くなって、いまは12世帯。気にかけてきた人の死はつらいことです。それも、自分が年を取るほどきつい。この2年ほどは『心身とも疲れた』という状態でした。様子を見かねた若いスタッフが『僕が引き継ぎます』と言ってくれたので、引退させてもらいます」

 ――具体的にどんなことを?

 「月に1回、復興住宅に暮らす被災者を訪ねていって、よもやま話をします。『雑談にどんな意味があるんです?』とよく聞かれるけど、大いに意味はありますよ。災害で家や家族や仕事を失って、住み慣れた場所から引き離されて『マイナス』から生き抜いてきた人たちです。『元気にしてる?』と訪ねていって、ひとときでも話し相手になることは、被災者にとって『置き去りにされていない』と実感できる時間になる。少しでも気持ちが晴れれば、少しずつ前を向けるようになると思います」

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 「一軒で数時間かかる時もあ…

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