海外のバレエ学校で学び、いずれは世界的ダンサーになりたい――スイスで毎年開かれる「ローザンヌ国際バレエコンクール」には、プロのバレエダンサーを目指す10代の若者たちが参加します。今年のコンクールは2月2~9日、会場のボーリュ劇場が改修中のため近郊のモントルーで開催されました。愛媛と福岡から参加した、ふたりの若きダンサーを追いました。
記事の後半に、ローザンヌで審査に臨む若者たちの動画があります。
演技中から「ブラボー!」
ヒュンと音を立てるほどに、長く細い脚が空を切り裂く。回転は速く力強く、滞空時間の長いジャンプは、浮いているようだ。演技の途中でこらえきれなくなった観客から「ヒュー」「ブラボー!」の大歓声が湧くと、あどけなさの残る少年が、この日一番の笑顔を見せた。
「ローザンヌ」の準決選で喝采を浴びたのは、出場者77人中最年少の松岡海人(かいと)さん。参加資格の15歳の誕生日を数日前に迎えたばかりだ。高校受験も、出発直前に済ませてきた。
松山市の「愛媛バレエアカデミー」で教室を営む母・玲子さん(47)から手ほどきを受け始めたのは3歳の頃。玲子さんは「バレエを始める前から回転が大好きで、いつもリビングで回っていた」と話す。回転のしすぎで、靴下には次々と穴が開いた。
夢は英国ロイヤル・バレエ団の最高位「プリンシパル」になること。気高さとエレガントさが持ち味の、世界最高峰のバレエ団。「壮大な夢だ」と言う人もいるが、この目標だけは譲れない。小4で買ってもらったロイヤル・バレエ団の『ドン・キホーテ』のDVD。昨年のコンクール審査委員長を務めたカルロス・アコスタさんが主役を張っている。初めて見た瞬間、「『僕はここに入るべきだ』と思った」。
練習は週6日、学校が終わってから午後11時まで。残りの1日は整体にあてる。松山の自宅兼レッスン場で、記者が「入賞も狙えるのでは」と言うと、「そんな……とてもとても」と謙遜し、「ローザンヌはみんなの憧れ。その舞台に立てるだけで幸せなんです」とはにかんだ。
「ローザンヌ」には、15~18歳のプロを目指すダンサーたちが参加する。踊りを撮影した動画での審査や、拒食症でないかなどの医療チェックを経て、ローザンヌの地を踏めるのは例年約80人。数百人規模のコンクールが多いなか、「ローザンヌ」は参加するだけでも狭き門だ。
「みんな日本人より脚長くて」
そして迎えたコンクール初日…
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