「独裁国家」の大統領に食い込め 砂漠に巨大プラント

有料記事経済インサイド

小出大貴
[PR]

経済インサイド

 2013年10月、中央アジアトルクメニスタン。大理石造りの大統領官邸の一室でベルドイムハメドフ大統領は、川崎重工業の井上英二・プラント事業代表(当時、現在は顧問)と向き合っていた。

 通訳以外は同席しない1対1の面談。同様の対談は2度目だ。川重は09年にトルクメニスタンでの初事業として肥料プラントの建設を受注し、14年の完成を控えていた。

 「カワサキは、来賓というよりも友達だ。肥料プラントのあとは、続けて(天然ガスからガソリンを精製する)ガス・ツー・ガソリン(GTG)プラントをお願いする」

 肥料プラントに続く現地での事業を探していた川重にとって、大統領からの言葉は「狙い通り」。井上氏は「実現に努力する」と応じた。

 それから約5年半後の19年6月、川重は大統領官邸から車で40分ほどの砂漠地帯にGTGプラントを完成させた。

大統領の「ご指名」勝ち取る

 幅850メートル、奥行き636メートルの巨大な敷地に工場建屋が並び、500キロ先のガス田とパイプでつながる。1日に420万立方メートルのガスを使い、「首都アシガバートの1日のガソリン消費量がカバーできる量」(川重関係者)という1800トンのガソリンをつくる。川重と建設作業を担うトルコの建設会社が、14年にトルクメニスタン国営ガス会社から約1500億円で共同で受注した。

 トルクメニスタンでは、旧ソ連崩壊の前年に就任したニヤゾフ初代大統領が個人崇拝国家を築き、07年に後を継いだ2代目大統領のベルドイムハメドフ氏も同様の路線を進め、事実上の「独裁国家」といわれる。

 中央アジアに詳しい名古屋外国語大学の地田徹朗・准教授(中央アジア地域研究)は「現大統領は国際社会での孤立を解消し、国内経済を安定させることで支持を得ようとしている」とみる。期待するのが、ロシア、イラン、カタールに次ぎ世界4位の埋蔵量とされる天然ガス事業だ。

ここから続き

 海外でのプラント事業を強化…

この記事は有料記事です。残り3440文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら