北九州市の西裕亮(にし・ゆうすけ)さん(41)は、原因不明の発熱に悩まされていました。複数の医療機関を受診したものの、やはり原因が分かりません。「何かおかしい」漠然とした不安を感じるようになりました。
原因不明の発熱や嘔吐
何かがおかしい。
西さんは2012年ごろから、原因不明の発熱に悩まされるようになった。ほかに目立った症状はないのに、何となくだるい。
北九州市内の病院を受診すると、「渡航歴はありますか」「何かペットは飼っていますか」と聞かれた。いずれも心当たりはない。診断は「不明熱」。医師は「様子をみましょう」と歯切れの悪い説明を繰り返した。
C型肝炎ウイルスやHIVに感染していないか。病院で検査を受けたが、陰性だった。本やネットで情報を集めると、次々に病名が浮かび、パニック状態になった。
体調不良は以前にもあった。10年夏、下痢が続き、痔(じ)の症状が悪化。肛門(こうもん)周辺がうむ合併症になり、2週間入院して手術を受けた。退院後に発熱や下痢、吐き気などが続いた。血液検査で炎症の程度を示す値が高いため入院。「細菌感染症」と診断され、抗生剤で治療を受けた。
シネコン(複合型映画館)で映写係として働いていた。10ある劇場の予定に沿ってフィルムをセットし、上映を始める。終われば、フィルムを交換し次に備える。多くの観客がいて、間違いは許されず、常に緊張感があった。映写の光源となるランプは温度が高く、フィルムをいためないよう映写室は常に室温を低く保っていた。「ストレスやおなかが冷えやすいことも体調不良に関係しているのかな」
14年1月、仕事中にトイレに行くと、黒いドロドロした便が出た。気分も悪くなり、仕事帰りに病院の救急外来に駆け込んだ。X線や血液検査などで調べたが「異常なし」。外来で様子をみることになった。
春になっても、腹痛や下痢はなくならなかった。出勤前に何度もトイレにこもり、職場で嘔吐(おうと)した。ずっと船酔いしているようだった。6月、かかりつけ医に胃カメラで調べてもらうと、十二指腸に炎症があった。
「やれることなら何でもやって欲しい」と大腸の内視鏡検査もお願いした。翌日、院長から電話があった。「クローン病のようです」
薬で治療、食欲戻らず
クローン病は、口から肛門に…
連載患者を生きる
この連載の一覧を見る- 北林晃治(きたばやし・こうじ)朝日新聞記者
- 科学医療部記者。02年入社、北海道報道部、さいたま総局、東京本社生活部、社会部、特別報道部などで医療など社会保障分野の取材を担当。