「スルメイカが食卓から消える日」 半世紀で最悪の不漁

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大日向寛文 三木一哉
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 サンマに続いて、庶民の海産物の代表格となるスルメイカが大不漁だ。今年度の漁獲量はこの半世紀で最低のペース。価格は高騰し、漁船の廃船が相次ぐ。漁師からは大幅な漁獲制限をしてでもまずは資源量の回復を、との声があがるが、日本だけでは解決できない事情がある。

 「イカの町」で知られる北海道函館市。繁華街には活イカ料理を目玉にする飲食店が並ぶ。「いか清」の室田秀文店長(42)は「昨年は海が荒れていないのに、イカが入荷しない日が何度もあった。お客さんに申し訳なくてね」と嘆く。10年ほど前は1千円ちょっとだった1人前の刺し身の価格は、昨年は2千円超えの日もあった。漁師からは、「イカを捕りに行ってももうけにならない」と漁をあきらめる声が届く。

 昨年10月には、恒例の「函館いか祭り」で、捕れたてのイカを売る「朝イカ販売」が中止になった。不漁は加工食品メーカーの経営にも影を落とす。約50社でつくる、函館特産食品工業協同組合の金木茂治副理事長(67)は「イカ加工はどん底の状態」と話す。

 市は、別の魚の加工に必要な設備の費用などを補助する制度を2018年度に設けたが、「函館の人や観光客がここでブリを食べようとはならない」(金木副理事長)。今年度の利用は1月末までで7社にとどまる。一方、加盟企業は近年、年1~2件のペースで廃業しているという。

 背に腹は代えられないと、イカの輸入量は急増している。昨年1年間の函館港のイカ輸入額は、前年比4倍増の約72億円。過去40年間で最高額に達した。

 不漁は全国に広がる。水産庁によると、00~14年度は15万~30万トンほどあったスルメイカの水揚げ量は、15年度以降に激減。昨年4月~12月末の水揚げ量は2・1万トンで、1951年以降で最低だった18年同期を3割も下回る。

 石川県漁業協同組合では、赤字操業を避けようと、ほとんどの漁船が漁期を1カ月残し、昨年末に早々と漁を打ち切った。10年ほど前は20隻あった主力の中型イカ釣り船は、今は13隻。さらに2隻が廃船を検討中という。

 水産庁によると、スルメイカを中心とするイカの1人当たりの年間消費量は、08年は魚介類でトップの995グラムだった。それが不漁の影響で18年は387グラムに落ち込み、サケ、マグロ、ブリ、エビに続く5位に。石川県漁協小木支所の白坂武雄参事は「スルメイカが食卓から消える日が来るのではないか」と心配する。

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