緩和ケア医ががんに 涙・お守り・免疫療法…その先に

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 東京都の行田泰明(ぎょうだ・やすあき)さん(59)は、緩和ケア医として激務の日々を送っていました。長引く胸焼けに、以前からの逆流性食道炎の再燃を疑い、職場で内視鏡検査を受けます。モニターに映った食道の様子は、予想とは違っていました。

胸焼けで検査「これは…」

 また、悪くなってきたかな。

 2014年1月、行田さんは胸焼けが続くのが気になっていた。

 30代のころから逆流性食道炎を患っていた。食道と胃がつながる場所に問題があり、本来は胃の中にとどまるはずの胃液などが食道に逆流しやすい。ときどき胸焼けの症状が起き、そのたびに胃酸を抑える薬をのんでいた。ただ今回はいつもと違い、薬を続けてもよくならない。食べものがのどにつかえる感じもした。

 行田さんは、もともとは麻酔科医だった。癌研究会(現・がん研究会)病院などで手術を受けるがん患者の全身状態の管理や、痛みを取り除く治療をしてきた。

 痛みをなくせば、患者は楽になると思っていた。でもモルヒネで痛みがひいても、沈んだ表情のまま亡くなった女性がいた。家に帰りたいけれど、帰れない。そんなこころの痛みを抱えていた。

 体の痛みだけでなく、こころも含めて患者をトータルに支えたい。03年に要町病院(東京都豊島区)に移り、緩和ケアに本格的に取り組み始めた。

 そこには、大学病院やがん専門病院などで「もう治療法はない」とされた患者らが移ってきていた。在宅の人も含め、多いときは1人で50人ほどを担当。帰宅するゆとりがなく、しばしば病院に泊まり込んだ。体はいつも疲れていたが、気持ちは充実していた。

 13年、誘われて都内の診療所に移った。ここでより充実した緩和ケア態勢づくりに取り組むつもりだった。だが施設側との行き違いもあって、実際には難しそうなことがわかり、近くここも退職することを決めていた。胸焼けを感じたのは、そんな時期だった。

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 14年2月の朝。在宅診療の…

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