「ネットは社会を分断しない」 逆張り論の真相は

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聞き手・林幹益 土屋亮
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 とげとげしい言葉を互いにぶつけ、決して意見は混じり合わない。ネットの言論空間に抱きがちなそんなイメージに疑問を投げかける新書「ネットは社会を分断しない」(KADOKAWA)が昨秋、出版されました。「逆張り」の主張に、にわかには信じがたい気も……。共著者で富士通総研経済研究所の浜屋敏さんとともに考えてみました。

「ネットは社会を分断しない」は、慶応大の田中辰雄教授(計量経済学)と浜屋敏氏の共著で、発行部数7千部(2020年2月25日時点)。2万~10万人を対象とした計3回のアンケートをもとに、ネットは「自らの考えにあった意見ばかりに触れ、意見の対立を生み、社会の分断をもたらしている」といった見方に疑問を呈した。

――最近のネットの動きで気になっていることは何ですか。

 プラットフォーム関連の規制が強まっていることは気になっています。グーグルやアマゾンなど「GAFA」はけしからんという人が増えていますよね。逆風がこれからどうなるかに一番関心があります。

――規制の強化は望ましいことですか。

 独占禁止法個人情報保護法など、すでにある規制は守るべきですが、プラットフォームに対する新たな規制には慎重にならないといけないと思います。

――なぜですか。

 巨大化しすぎているから規制がいるという流れですが、プラットフォームビジネスとは、そもそもそういう構造です。多くの人が利用するほど価値は高くなりますし、複数のプラットフォームを使うのは面倒だから、大きなものに収斂(しゅうれん)していきます。

 過度に規制してしまうと、日本市場は活動しにくいと敬遠され、日本の消費者がサービスを受けられなくなってしまい、日本発のネットビジネスも育ちにくくなります。

――著書でもネットの可能性を重視していますね。

 インターネットの利点は、誰もがSNSで自由に情報発信して、互いにつながることです。それがプラットフォームの巨大化にもつながるわけです。最初は人と人がつながるのはすごくいいことだと思われていましたが、最近になって、つながることで罵倒や誹謗(ひぼう)中傷が出てきたと思われている。

 実はアメリカの研究では、ネットが原因で分断される、分断されないの両方の結果が出ている。日本はどうなのとかと思い、わたしたちは大規模なアンケートをしたのですが、その結果、日本では分断されていないというのが、定量分析の結果でした。

 ネットによる意見の過激化は日本の調査では出なかったわけです。ネットでは反対側の意見を見るコストはたいしてかからないので、相手の意見を知る機会は増える。実際にネット利用者は違う意見へもアクセスしていました。

――では、なぜ「ネット=分断」と受け取られるのでしょう。

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