拡大する写真・図版作文の授業で活発に手を挙げる4年生の子どもたち=2020年1月31日、堺市立新金岡東小学校

 子どもが生活のありのままを作文に書き、クラスで読み合う「生活綴方(つづりかた)」。取り組む教師が減っているこの教育法を、堺市のある公立小学校が昨春、全学年で一斉に採り入れた。子どもや先生にどんな変化が起きたのか。(宮崎亮

「最下位になろうとしたけど」

 1月31日。堺市立新金岡東小学校では、クラスメートの作文を全員で読み合う授業が6学年の全7クラスで開かれていた。「第52回大阪作文教育研究大会」(なにわ作文の会主催)の公開授業だ。

 4年1組では、中西開莉(かいり)さん(10)が地域のマラソン大会について書いた作文が全員に配られた。「(略)歩いたときは、胸が痛かった。雨がふったときは、雨が顔にあたって冷たかった。最初は、最下位になろうとしたけど、ゴール前でめんどくさくなってゴールした。それで、51位だった(略)。ゴールした後もちを食べて、遊んだ」

 担任の石川歩夢(あゆむ)先生(27)が読み上げ、気になる箇所に線を引いて発表するよう、子どもらに促した。

 「えっと、『ゴール前でめんどくさくなってゴールした』ってとこ」。男子の1人が言うと、8人ほどが手を挙げて同調。「なんで最下位になろうとしたんやろ」。議論が始まった。

 同じ大会を走った子が、最初は全力疾走だったと証言。「中西、ウッワーって走ってた」。教室がどっと沸くと、別の子が言った。

 「でも、思いっきり走ってたら普通、最下位になろうとせえへんやん」

 石川先生の狙い通りの展開だ。中西さんはあまり得意でない授業では、すぐにふざける癖があった。「最下位になろう」も照れ隠しだとみた石川先生は、がんばる姿をみんなで認め、自信をつけさせたかった。

■「やっぱり『もち』…

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