「明日破産する」でも驚きなし 百貨店外商マンの1カ月

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星乃勇介 青山絵美
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 日本百貨店協会加盟としては山形県内唯一の百貨店「大沼」(山形市)が自己破産を申請してから間もなく1カ月。創業320年の老舗は一夜でたたまれ、約190人が解雇された。大沼を愛してくれたお客への申し訳なさ、生計への不安、会社への憤り。様々な思いを抱えつつ、元従業員たちは職探しに歩いている。

 「大沼を失職した岸と申します」。机を挟んだ面接担当者の眉がぴくりと上がる。「大変でしたね」

 今月14日、約120社が参加して、山形市内で開かれた集団面接会。大沼で外商をしていた岸健一さん(57)はこの日、4社目のブースにいた。前職含めて営業キャリアは30年。それでも緊張する。

 「うちは26歳まで」「ITスキルを覚えた頃には定年」。どこもやんわり断ってくる。会場のあちこちに元同僚がいる。みんな浮かない顔だ。「周り(同僚)に(次の職場が)決まった人いるか?」。尋ねたが首を振られた。

  ×  ×  ×

 河北町出身。県立高校を出て、日本専売公社(現JT)に入った。長く営業を担当し、4年前に早期退職。間もなく、営業の経験を買われて大沼に勤める知人からスカウトされた。

 大沼は子どもの頃、年に1度、親に連れてきてもらった特別な場所。ぐるぐる回る屋上の遊具に乗った。だが大人になってからは年に数回、催事に足を向ける程度。何かの縁に思えた。

 入社すると約100件の顧客リストを渡され、あいさつ回りを始めた。リストは定期的に買ってくれる「上得意」のものではなかった。売り上げはゼロが続き、嫌みを言う上司も。それでも「いつかは売ってやる」とめげずにお客を回った。

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 最初に売れたのは半年後、1…

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