コロナで一変した北京記者生活 感染と景気 当局の苦悩

有料記事経世彩民

中国総局・福田直之
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経世彩民 福田直之の目

 北京駐在特派員としての私の記者生活は、新型コロナウイルスの流行で一変した。

 人だらけだった北京の街は静まりかえっている。今月10日に出勤が解禁され、車は走り出した。だが、路上の人はまばら。映画館もスポーツジムも閉まったまま。レストランは開いているところもあるが人は少ない。

 日本人から見れば当たり前と言われるかもしれないが、みなマスクをしている。6年前の冬、PM2.5による大気汚染で北京の景色は真っ白だった。にもかかわらず誰もマスクをしておらず、自分が浮いていたのを思い出す。それだけみな用心深くなった。

 建物の出入りは厳しく管理されている。最低でも検温が必要だ。自宅のマンションで係員に聞くと、37.3度が基準という。先日、職場の入り口で37.4度と出た。その後、やり直すと3回連続で36.8度。安心した。感染の疑いがあるなら仕方がない。だが、誤作動で隔離されたら、たまらない。自前の体温計を持ち歩くようになった。

仕事終わっても寝付けない日々

 毎日感染を気にしながら、膨大な発表に目を通し、長い原稿を書く。仕事を終えると無気力に座り込むだけ。かといって寝付けもしない。過敏になりすぎているのだろうか。感染と戦う社会の張り詰めた空気に、自分も支配されていると感じる。

 社会を止めてしまう厳しい措置で、感染が深刻な湖北省以外、感染拡大は歯止めがかかりつつある。春には非常事態は収束すると信じたい。

 気持ちが明るくなる話もあった。最初の感染が起こり、封鎖された武漢。ここで以前取材したベンチャー経営者と連絡が取れた。従業員も含め、みな無事だそうだ。

 「全ての企業が巨大な損をするが、我々はまだやっていける。プロジェクトは数カ月延期せざるをえないが、この間、私たちは会社の戦略を練り直す。時間を浪費することはない」と力強く語ってくれた。

 この経営者の言うとおり、新型肺炎の発生は全ての中国人に多大な犠牲を強いている。

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 中国指導部の苦悩は深いだろ…

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