ただ、さびしくて…夫・藤田宜永を失った小池真理子さん

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寄稿
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 1月30日に作家の藤田宜永(よしなが)さんが69歳で亡くなった。妻で共に直木賞作家の小池真理子さんに文章を寄せてもらった。

夫・藤田宜永の死に寄せて 寄稿:小池真理子(作家)

 三十七年前に出会い、恋におち、互いに小説家になることを夢みて共に暮らし始めた。初めから子どもを作らない選択をし、それならば入籍の必要はない、として事実婚を続けた。互いにいくつかの文学賞を受賞し、ひとつ屋根の下に二人の作家がいる、という風変わりな生活を楽しんできた。

 世間から「おしどり夫婦」と呼ばれることも多かったが、私も彼もそのような手垢(てあか)のついた括(くく)られ方は好まなかった。私たちはよくしゃべり、正直にふるまい、派手な喧嘩(けんか)もした。そうやって小説を書き続け、気づけば年をとっていた。

 婚姻届を出したのは十一年ほど前。銀行や病院などで「藤田さん」と呼ばれることにやっと慣れてきた二〇一八年春、名だたるヘビースモーカーだった彼の肺に3・5センチの腫瘍(しゅよう)が見つかった。

 以後、亡くなるまでの一年と…

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