院内感染、下痢・嘔吐でも拡大か 武漢の医療状況、深刻

阿部彰芳 松浦祐子
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 日本人男性の死亡との関係は不明だが、新型コロナウイルスが蔓延(まんえん)する中国湖北省の医療は深刻な状況だ。病院が感染拡大の「舞台」になり、患者の増加やスタッフの疲弊を加速させている恐れも出てきた。

 新型コロナウイルス感染にからみ、武漢大学中南医院のグループは、7日付の米医師会雑誌に院内感染の状況を発表した。

 発表によると、1月1~28日に同院で入院治療を受けた新型肺炎の患者138人のうち、院内感染は57人(41%)。このうち17人は別の病気で入院していた患者、40人は医療スタッフだった。10人以上のスタッフと少なくとも4人の患者が、1人の患者から感染したと疑われる事例もあった。

 短期間に感染が広がった背景には、発症した初期に一部の患者でみられる下痢や嘔吐(おうと)が関わった可能性がある。新型ウイルスは、患者のくしゃみやせきで外に出たウイルスが周囲の人にうつる「飛沫(ひまつ)感染」だけでなく、患者の身の回りの物に付着したウイルスが手に付いて、口や鼻から侵入する「接触感染」も起きるとみられている。

 ウイルスは便や吐いたものにも含まれるとの報告もあり、衛生管理が徹底されていないと感染を広げてしまう。多くの患者が押しかける中で、ほかの医療機関でも同様の院内感染が起きている可能性がある。

 一方、新型肺炎の死亡者の約95%が武漢市がある湖北省で発生し、致死率も3%近いが、湖北省以外の致死率は0・2%ほどで、インフルエンザとほぼ同じ。日本では今のところ死亡者はいない。東京医科大の濱田篤郎教授(渡航医学)は「湖北省とそれ以外の地域では分けて考える必要がある」と強調する。

 「日本では過剰な心配をするよりも、リスクの高い高齢者や持病のある人を優先的に治療できる医療体制の整備を進めていくことの方が重要だ」と濱田さんは指摘する。(阿部彰芳、松浦祐子)

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