もはや昭和の犯罪? 「大阪名物」ひったくり、なぜ急減

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光墨祥吾
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 大阪名物「ひったくり」――。たこ焼きとともに長年、大阪の代名詞とも言われた犯罪が急減している。昨年の大阪府内のひったくりの認知件数は9年ぶりに全国ワーストを脱し、2000年のピーク時より1万件以上減った。金銭目的の犯罪がひったくりから特殊詐欺へとシフトしたとの指摘もあり、課題も残る。

 警察庁によると、2019年1~12月のひったくりの認知件数(暫定値)は東京259件、大阪254件で、5件差で東京都が大阪府を上回った。昨年11月までは大阪府が東京都を5件上回っていたが、12月で逆転した。千葉県がワーストとなった10年を除いて、大阪府は統計が残る1976年以降、ワーストであり続けた。

 大阪府のひったくり認知件数のピークは00年の1万973件で全国のピークは02年の5万2919件。認知件数は全国的にも大きく減少し、昨年は全国で1553件とピーク時の2・9%まで減った。鳥取、島根や富山、秋田といった「ひったくりゼロ」の県もある。

 府警は02年から重点的に取り締まる犯罪項目として「ひったくり・路上強盗」を指定してきたが、今年に入って除外した。府警幹部は「自治体や住民ボランティアらの協力を得た『オール大阪』で取り組んできた成果。今後も捜査力を向上させていきたい」と語る。

 ただ、課題は残る。立正大の小宮信夫教授(犯罪学)は「ひったくりは昭和の犯罪。金銭目的の犯罪は、特殊詐欺へ移った」と指摘し、リスクのとらえ方に着目する。「ひったくりは手軽だが、盗めても少額で捕まりやすい。相手をけがさせればより罪は重くなる。一方で、特殊詐欺は捕まりにくいのに、高額が得やすい犯罪だ」

 実際、ひったくりの減少に反比例する形で、特殊詐欺は深刻化している。大阪府の認知件数は11年の329件から増加傾向にあり、昨年は1807件。小宮教授は「組織的で分業化した詐欺集団は、受け子ら『実動部隊』に手口や組織に関する情報を詳しく教えない。彼らを検挙しても、集団の全容解明は難しい」と話し、「トカゲのしっぽ切り」にとどまる傾向を指摘する。昨年の検挙率は40%だった。

防犯カメラ効果

 ひったくりが激減した背景には何があるのか。

 大阪市浪速区のJR難波駅近くの事務所や住宅が並ぶ一角。薄暗い道を信号の光がわずかに照らす。建物の壁には「防犯カメラ作動中」の貼り紙。見上げるとレンズが向いていた。

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