シンギュラリティーにっぽん
ネット広告は、地上波テレビを抜いて媒体別で最大の市場になる見通しだ。質、量ともに想像を超える個人データを収集し、その人に合わせた内容を届ける。守るべきは便利さなのか、それともプライバシーか。(大津智義、牛尾梓)
シンギュラリティー:人工知能(AI)が人間を超えるまで技術が進むタイミング。技術的特異点と訳される。そこから派生して、社会が加速度的な変化を遂げるときにもこの言葉が使われ始めている。
縦列駐車した赤いミニバンに女性が近づいてくる。狭い場所ながら軽々とバックドアを開け、両手に持った二つの大きな荷物を車内に積み込んだ。
大手自動車メーカーが旅行好きの若い女性に向け、フェイスブック(FB)で配信した動画広告だ。
この広告には1700もの別バージョンがある。あるものは、サッカーボールを抱えた若い男性が車で出かけようとする。美容や料理、キャンプやサーフィンといった趣味ごとに、時間も昼夜と使い分け、その人の関心をピンポイントで見透かすように、広告を出し分ける。
そこまで細分化できるのには理由がある。「利用者が登録した実名を軸に、パソコンや携帯電話といった複数のデバイスをまたいでも同一人物として認識できるのが強み」。FBの担当者は説明する。自社サービス内でのデータ取得にとどまらず、外部のサイトやアプリとも連携。さらに、利用者がどんなものに「いいね」ボタンを押すかを通じても趣味嗜好(しこう)を知ることができる。
FB日本法人によると、FB…
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