「地球上で行き場失う」 無国籍男性めぐる判決に驚き

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藤崎麻里
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 旧ソ連出身で無国籍のまま日本に渡ってきた男性(52)を「難民」と認め、日本政府による強制退去命令を取り消す高裁判決が29日に出た。「難民にあたらない」とする国の主張を認めた一審判決から、男性側の主張を認める逆転判決に。「原告を受け入れてくれる見込みのある国は存在しない」という裁判所の判断に、難民支援者らには驚きと喜びが広がった。

旧ソ連崩壊で無国籍に

 国を訴えていたのは、旧ソ連(現ジョージア)に住んでいたアルメニア民族の男性だ。アルメニア民族は、ユダヤ人に次ぐ規模のディアスポラ(離散民族)とされ、旧ソ連を含めて世界各地にいる民族だ。

 男性は生まれると同時に旧ソ連の国籍をもっていたが、1991年4月にジョージア共和国が独立し、その後、旧ソ連は崩壊した。

 ジョージアでは、アルメニア民族らはジョージア民族から差別を受けた。その後、軍のクーデターがあり、無政府状態に陥るなかでも、差別に基づく暴行や略奪を受けた。

 男性によると、家族が避難していくなかで、男性は母から「自宅財産を守るために残るように」と言われ、ひとり残された。知人が住宅を行政によって保証なしに収用されたことなどから、男性はジョージアにあった家を売却。国境検問を経ずにジョージアを出て、ロシアに入国した。

 男性はロシア国籍を取得してロシアに定住することをめざしたが、認められなかったという。その後も定住地を見つけられず、国籍も持てないままとなった。1993年以降、ウクライナベラルーシ、ポーランド、ドイツフランススペインノルウェーアイルランド、英国などを転々としながら就労し、各地で難民申請などもしてきたが、認められなかった。

 男性が偽造パスポートを使って日本に渡ったのは2010年。難民申請をしたが認められず、12年、主に旧ソ連時代に住んでいたジョージアへの強制退去を東京入管から命じられた。

 男性は国を相手に、退去命令…

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