「音楽の力」は一番嫌いな言葉 坂本龍一さんが抱くトラウマ

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聞き手・河村能宏
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 このごろ災害などが起きた時にやたらと叫ばれる「音楽の力」という言葉に、ミュージシャンの坂本龍一さんは強い嫌悪感を抱いているという。東日本大震災後に東北で子どもたちのオーケストラを指導するなど、音楽を通じた社会活動を続けてきた坂本さんがなぜいま、そう考えているのか。福島県の練習場を訪ねて聞いた。

メッセージをこめるのは苦手

――岩手、宮城、福島の被災3県の子どもたちで「東北ユースオーケストラ」を結成し、音楽監督に就任されたのが、2014年。演奏会を定期的に開催するなど定着した印象があります

 「もともと僕は何かを始めてもすぐ他のことをやりたくなっちゃう、飽きっぽい性格なんですよ。今まで僕が出してきたアルバムって、全然一貫性がないでしょ? だけど、これは簡単には放り出せない。そんな覚悟で臨んでいます」

 ――熱心に指導している姿が印象的でした

 「この東北ユースオケは誰がしようと言ったわけではないが、上下関係、年齢による差別がない。小学生と大学生がため口で友達になっている。それが自然だと思っていたが、夏合宿をした時、そのことを話してみたら『他にそんな場所はない』という。家でも学校でも上下関係、縦社会がある、と」

――確かに学校でも、体育会系な吹奏楽部ってありますからね

 「僕は本当にそういうやり方が嫌いです。楽しくない顔をして音楽をやるんだったら、意味がないと思っている。ここは下手でも楽しくやるのがいいし、大人も子どもも関係ないフラットさがいい。それも誰かが指導しているわけでもなく自然になっている。それが本当にうれしい」

――こういう活動は「音楽の力」が……

 「僕、一番嫌いな言葉なんで…

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    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2023年4月3日7時32分 投稿
    【視点】

    仕事柄、在日米軍基地は必要だという側も、不要だという側も取材しますが、後者のこぢんまりとした集会に坂本さんがさらっとビデオメッセージを送ってきたのを見たことがあります。音楽と社会の関係をどうお考えなんだろうと思っていた頃、読んでなるほどと思

    …続きを読む
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    中川文如
    (朝日新聞スポーツ部次長)
    2023年4月3日16時38分 投稿
    【視点】

    スポーツを担当する私にとって、音楽は全くの畑違いです。ただ、この坂本龍一さんのインタビューには、共感してしまう言葉、うならされる言葉がいっぱい詰まっていました。 「僕、(音楽の力というのが)一番嫌いな言葉なんですよ。もちろん(音楽に力

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