マイナーな原料から復活 ビールの魂、見直される国産品

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長橋亮文
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 「遠野物語」で知られる岩手県遠野市。東北のこの地で、キリンビールを傘下に持つキリンホールディングス(HD)が新たな国産ホップづくりに取り組んでいる。ビールに香りと苦みを加えるホップは「ビールの魂」といわれる。多くの国産ビールで使われるのはドイツからの輸入品で、生産に手間がかかる国産ホップは脇役扱いが続いていた。しかし近年は国産ホップも脚光を浴びつつある。新品種の開発に取り組むキリンの技術者の姿から、ビール市場の変化を追った。

 昨年秋、遠野市のホップ畑。高さ7メートルほどまでまっすぐ伸びた国産ホップの新品種「ムラカミセブン」のつるには、親指くらいの緑色の球花がたくさん実っていた。ドイツ製の収穫機械で刈り取ると、みずみずしい香りが広がっていく。現在収穫できるのは年間1.4トンほどと少なく、まだキリンのビールの一部に使われているだけだ。

開発者の名が新品種に

 ビールづくりでは一般的に、ホップは麦汁を煮沸するときに加える。入れるタイミングによって苦みと香りが変わり、ホップによってビールの味わいは大きく左右される。ムラカミセブンの開発を担ったキリン酒類技術研究所の村上敦司さん(56)は「世界に類のない香りで、海外からも注目されている品種です」。新品種の名前は村上さんにちなんだものだ。

 村上さんがキリンビールに入社したのは1988年。定年が近づいたホップ担当者の後継者として、福島や岩手のホップ畑で品種改良に取り組み始めた。

 入社1年目のある日、キリンの副社長が研究所に巡回でやってきた。新人を激励するのかと思っていた村上さんは、かけられた言葉に驚いた。

 「ホップの品種改良なんてやっているのか」

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 当時は、コストの高い国産ホ…

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