量子技術、実用化遅れ「極めて深刻」 産官学で戦略 

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嘉幡久敬
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【科学力】

 スパコンをはるかに超える量子コンピューター、絶対に解読されない量子暗号といった量子技術の研究開発に関する国の指針「量子技術イノベーション戦略」が、政府の統合イノベーション戦略推進会議で決定された。今後10~20年にわたる国の指針で、量子技術をバイオ、人工知能(AI)と並ぶ重要技術に位置づけ、世界に遅れないために産学官で取り組むさまざまな施策が盛り込まれた。だが、課題も山積している。

産業政策の色彩濃く

 量子技術はミクロの世界の原理である物理学の法則「量子力学」を基盤とした技術のことで、計算や暗号だけでなく電子、通信、物性、エレクトロニクス、情報工学など広範な分野にまたがって社会を大きく変える技術とされる。世界では研究開発や特許などの知財取得、国際標準化に向けた競争が始まっている。

 「戦略に『イノベーション』がついているのは、いかに産業に結びつけるかを考えたから。単なる技術開発ではない。産業、社会を変える起爆剤としてこの分野への投資を促進する」

 都内で開かれた量子技術の研究者の集まりで、戦略策定にかかわった文科省の担当室長はこう話した。

 科学技術に関する国の戦略は、科学技術の司令塔である総合科学技術・イノベーション会議が策定するのが通例だが、今回は策定したのはその上部にある統合イノベーション戦略推進会議。科学技術を使って経済活性化をめざす官邸の意向が強く反映され、産業政策の色彩が濃い。

 戦略ではまず、量子技術を、人工知能やデータ関連技術などが支えるデータ駆動型社会を発展させる鍵と位置づけた。欧米や中国がすでに投資を拡充している中で、日本は実用化や産業化に向けた遅れが極めて深刻な状況とし、バイオ、AIと並ぶ国の重要技術に位置づけて開発を進めるという。

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 量子技術の主な領域としては…

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