家族を選んだ新人王 幸せでも消せない「リングの恍惚」

有料記事

塩谷耕吾
[PR]

 朝7時、斉藤司さん(29)=東京都墨田区=はコンビニの夜勤を終えて、自宅マンションに戻る。7歳の長女を小学校に送り出し、4歳の長男と2歳の次女を保育園に送り、足が不自由で車椅子に乗る妻と買い物にでかける。

 斉藤さんは、元日本ランカーのプロボクサー。リングを離れて4年ほどになる。

 布団に入るのは昼過ぎだ。夕方に起きると、保育園に子どもたちを迎えに行き、夕飯のしたくをする。子どもを風呂に入れて寝かしつけると、午後9時、ひとり、また夜勤に向かう。

 無心になりたくて、ときどき家の近くの隅田川沿いを走る。シュッ、シュッ。ステップを踏みながら握った拳を突き出す。

 小学6年でボクシングを始めた。中2からジムに住み込み、17歳でプロテストに合格した。母子家庭で育ち、いつかチャンピオンになって家族を幸せにしたいと夢見るようになった。全日本新人王を獲得した。

 ところが、14年間通ったジムのオーナーと衝突。ボクシングにもっと打ち込むためにジムを移ろうとしたところ、ボクシング界の慣習に阻まれた。移籍の自由を求めて、2016年に裁判を起こした。

ここから続き

 2年かけて移籍を勝ち取り…

この記事は有料記事です。残り402文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら