父の遺志継ぎ「幸美号」寄贈 血液運搬車45年で7台目

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大野宏
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 45年前に小児がんで亡くなった岡本幸美(ゆきみ)ちゃん(当時3歳)の名前が付けられた献血運搬車「幸美号」が和歌山県赤十字血液センターに寄贈された。娘を失って以来、6台を贈ってきた父の岡本崇さん=印南町=が昨年急逝。幸美ちゃんの兄弟姉妹が遺志を引き継ぎ、7台目の幸美号を寄贈した。

 幸美ちゃんは崇さんの三女。8歳年上で当時小学生だった長兄の宏之さん(55)は「非常に顔立ちが整ってよく気がつく、聡(さと)い子でした」と振り返る。

 しかし、2歳を過ぎたころ、腎臓にがんが見つかる。治療に新鮮な血液の輸血が必要になったが、血液型は日本人では約500人に1人といわれるA型の「Rhマイナス」。父の崇さんは輸血できる人を探し歩き、一緒に入院先まで来てもらった。輸血を受けると血の気が引いた顔に赤みが差したことを振り返り、「たった3年しか生きられなかったけど、献血で貴重な時間をいただいた」とよく話していたという。

 幸美ちゃんは1975年6月に息を引き取った。香典返しのつもりで、お世話になった血液センターに寄付したいと崇さんが申し出たところ、当時の大橋正雄知事から「形に残してやってほしい」と、センターから医療機関へ血液を運ぶ献血運搬車の購入を提案された。同年9月に最初の「幸美号」を贈り、廃車になると聞くたび、新しい車を贈り続けてきた。

 宏之さんは崇さんとお酒を飲みながら「おやじが死んだ後、俺は何かせんなんことあるんか」と、それとなく幸美号について尋ねたことがある。「ニコニコと笑いながら『お前にだったらわかるやろう』と。何も指図はしませんでした」。元気だった崇さんは昨年2月、自宅で急に倒れ、そのまま亡くなった。85歳だった。

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