鴻上尚史さん、10代に「空気読んでも従わない」生き方

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聞き手・興野優平
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 延々と終わらないLINEのやり取り、とくに義理もないのに断り切れなかった先輩の頼み……。ときにその場を支配する「空気」と、どうつきあえばいいのでしょう。昨年、『「空気」を読んでも従わない 生き苦しさからラクになる』(岩波ジュニア新書)を出版した劇作家の鴻上尚史さんは、アエラドットで読者の悩みに答える連載「ほがらか人生相談」などで様々な人の悩みに向き合ってきました。日本の空気の正体とは、「この国の同調圧力の嵐に無防備にさらされている10代」に伝えたいこととは、周りに「合わせない」生き方とは。

 ――『「空気」を読んでも従わない』は岩波ジュニア新書という形で、とくに中高生に向けて書きました。

 「自分は本当は人の頼みを断りたいのに断れない、LINEの返事をあせっちゃう。この国の同調圧力の嵐にわりと無防備にさらされているのが10代だと思ったんですね。その中高生に言葉を届けたいと思った。もちろん、大人も無意味に同調圧力にさらされるんだけど、まだかわし方や戦い方の知恵がついたりする。でも、10代はほんとうにさらされてしまう。それは、君が弱いわけではなく、僕らが生きているこの国の文化の形なんだということを伝えたい、ということですね」

 ――いまの10代は、どういう環境にいると考えていますか。

 「昔との一番の違いはスマホを持ったこと。スマホ以前、以後でずいぶん文化が変わりました。いいね、リツイートの数など、スマホが自意識を肥大していく装置として機能しています。だから周りのことが気になるし、インスタやツイッターを見ることによって自分以外の人はみんな楽しくやっているのではないかという気持ちを持つ。でも、同時にスマホを持ったことによって普段つながれなかったはずの人とつながり、手に入らなかったはずの情報を手に入れることもある。新しいメディアは、人間関係を良い意味でも悪い意味でも加速させます。スマホは僕らの息苦しさを加速したし、同時に希望も加速している、という気がしています」

 ――「空気」は「世間」と大きく関係していると述べています。どういうことでしょうか。

江戸時代までの日本人には、自分と関係ある人たちだけでつくられた『世間』しかなく、関係ない人たちでつくられた『社会』という考え方はありませんでした」と語る鴻上さん。「複数の弱い世間」を持つべきだと提言しています。

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