ロリータ服着る私、気軽に否定される 「普通」との闘い

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聞き手・高久潤
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 お姫様スタイルを基調にした日本独自のロリータ服で、20年以上「カワイイ」を発信してきた青木美沙子さん。「個性重視」が建前に過ぎない日本社会で、同調圧力にあらがって生きる方法とは?

 ――青木さんは私と同世代の36歳です。失礼な質問ですが、普段からその格好なんですか。

 「『年相応じゃない』と言いたいわけですよね。30代でフリルがついたピンクの服を着るのは変だろう、って。ロリータ服を着ていると、『こりん星から着たの?』『毎日マカロンでも食べているの?』なんて言葉が飛んできます。面と向かって『馬鹿なの?』とまで言われたこともあります。総じて男性からです」

 「ロリータ服は日本発の独自の服装です。ヨーロッパや、最近は中国でも人気で、市場も大きくなってきています。国内外のイベントに呼んでもらっているので着るのは仕事でもあるけど、日常生活もこの格好で街を歩いています」

 ――きっかけは何ですか。

 「高校1年生の時に原宿で読者モデルとして声をかけられて、初めて仕事でロリータ服を着ました。袖を通した時に胸がときめいたのをよく覚えています。当時は(安室奈美恵さんにあこがれた)アムラー全盛期でギャルっぽい服が人気。ロリータ服を着て『これなら大人になってもお姫様のままでいられる』と思いました」

 「女の子は大人に近づくと『モテ』、つまり男性の視線を意識した方向にいってしまいます。でもロリータ服は違う。子どものころに憧れた『お姫様』という私だけの欲望をかなえてくれる格好でした」

 ――そこからモデルをめざした、と。

 「違います。私はモデルと同時に看護師としても働いています。読者モデルをしていても、プロのモデルとは全然違いますし、仕事としては医療の世界で働きたいと中学生の時から考えていました。テレビドラマ『ER緊急救命室』や『ナースのお仕事』の影響ですが、医療の現場で働く女性に憧れたんです。白衣を着て自分が身につけたスキルで人の命を救う、自立して働く女性の姿が本当にかっこよかった。看護科がある高校を選び、短大に進みました。大学病院での勤務などを経て、今は訪問看護の現場で働いています」

 ――そのときの格好は……。

 「もちろん医療の現場ではナースの服装をしています」

 ――子どものころから個性的だったんですか。中学・高校時代に決めたスタイルを今も貫くのはたやすくありません。

 「『普通』でした。ファッションは確かに好きでしたが、たいして目立つわけでもない。目立ちたいわけでもない。勉強、スポーツともに本当に普通。医療現場に憧れましたけど、『頭が足りない』ので医者を目指したことはありません。特技もなかったですし、周囲の空気を読む子どもでした」

 「だからこそ、女の子の欲望にまっすぐ答えるロリータ服にひかれたのかもしれません。私、中学生の時に太めだったんです。ロリータ服は、体のラインとか女の子のコンプレックスを隠してくれます。私は仕事柄、薬品で手が荒れてしまいます。それもフリルやレースの手袋で隠れるから、気にならない。誰でもかわいくなれる、自分を肯定できる服です」

 ――モデルと看護師のどちらかにしようと思いませんか。

 「ロリータ服は私にとって戦闘服なんです。私はこれを着ることで自分が自分でいられる。人前にも堂々と出られるし、こんなふうにインタビューにだって答えられる。でも看護師として信頼関係を築いた患者さんに『ありがとう』と言われる喜びは、モデルとして『かわいいね』『素敵だね』と言われてうれしい気持ちより圧倒的に上です。だからどちらも必要なんです。モデルは自分が主役、看護師は患者さんを助ける正反対の仕事。だから世界の見え方も全然違います」

 ――自分のスタイルを貫くのはかっこいいですが、「TPO」も必要では。

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 「TPOを無視しているわけ…

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