「結愛の死無駄にしたくない」母が記者に語った夫の支配

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 5歳の船戸結愛(ゆあ)ちゃんが命を落とした東京都目黒区の児童虐待死事件で、保護責任者遺棄致死罪で懲役8年の一審判決を受けた母親の優里被告(27)=控訴=が拘置所で朝日新聞の取材に応じた。「しつけ」を振りかざす夫の言動に違和感を抱きながら、娘のためによかれと思って重ねた選択が最悪の結果を招いた――。被告が語ったのは、裁判でも一部明らかになっていた、DV(家庭内暴力)と虐待との深い関わりだった。

 「『助けて』の一言が素直に言えなかった」。10月のある日、東京拘置所の面会室で、グレーのスウェット姿の優里被告は静かに語り始めた。その声は、年相応の若々しさがあった。

 語り起こしたのは、当時の夫・雄大受刑者(34)=保護責任者遺棄致死罪などで懲役13年が確定、事件後に離婚=とのなれそめからだった。

 結愛ちゃんの実父である元夫と別れ、ひとりで結愛ちゃんを育てながら地元・香川で働いていた頃、同じ職場で出会った。年上で、都会育ち。自分の知らないことをたくさん知っているようで、頼もしかった。

 2016年春に結婚。「けんかになると長引く人だ」という印象をもっていたが、連れ子の結愛ちゃんにも夫は当初優しく、一緒に公園で遊び、「友達がいっぱいいる子に育てたい」と熱く語っていた。

 夫との間にも16年秋、子どもが生まれた。その前後から、歯磨き、あいさつ、靴並べなど結愛ちゃんへのしつけをめぐって夫の威圧的な言動が増えた。しつけを強要され、言ったことができないと、怒りが優里被告に向けられた。

 同年8月下旬、水に顔をつけることができない結愛ちゃんに練習させるよう言われた。できないと説教が長引くので、風呂場で「頭を押すよ」と何度も言った。

 結愛ちゃんの泣き声を聞いた近隣住民が児童相談所に通報した。職員に「誰が通報したんですか」と問い詰めるように聞いたが、心の中では「やっぱりやりすぎだ」と気づいた。

夫から、なぜ逃げられなかったのか。「この心情は理解してもらえない」。記事の後半では、結愛ちゃんの母がとらわれていた夫への恐怖を詳細に語ります。

 だが、夫からは「しっかりし…

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