「多様性」の気持ちよさに負けて 村田沙耶香さんの後悔

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 「クレージーさやか」。芥川賞の受賞後、作家の村田沙耶香さんにはこんなあだ名がつきました。その時の経験を踏まえて、「私と多様性」をテーマに寄稿していただきました。

     ◇

 子供の頃、大人が「個性」という言葉を安易に使うのが大嫌いだった。

 確か中学生くらいのころ、急に学校の先生が一斉に「個性」という言葉を使い始めたという記憶がある。今まで私たちを扱いやすいように、平均化しようとしていた人たちが、急になぜ? という気持ちと、その言葉を使っているときの、気持ちのよさそうな様子がとても薄気味悪かった。全校集会では「個性を大事にしよう」と若い男の先生が大きな声で演説した。「ちょうどいい、大人が喜ぶくらいの」個性的な絵や作文が褒められたり、評価されたりするようになった。「さあ、怖がらないで、みんなももっと個性を出しなさい!」と言わんばかりだった。そして、本当に異質なもの、異常性を感じさせるものは、今まで通り静かに排除されていた。

 当時の私は、「個性」とは…

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