伊藤詩織氏が勝訴 「合意のないまま性行為」認める

新屋絵理
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 望まない性行為で精神的苦痛を受けたとして、ジャーナリストの伊藤詩織氏(30)が元TBS記者の山口敬之氏(53)に1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は18日、伊藤氏の訴えを認めて山口氏に330万円の支払いを命じた。鈴木昭洋裁判長は「酩酊(めいてい)状態で意識のない伊藤氏に対し、合意がないまま性行為に及んだ」と認めた。

 判決などによると、米ニューヨークの大学でジャーナリズムを学んでいた伊藤氏は2013年、TBSワシントン支局長だった山口氏と知り合った。伊藤氏がメディアの就職先の紹介を求めるメールを送ったのをきっかけに、15年4月、都内のすし屋で酒を飲みながら会食。その後タクシーで山口氏が滞在していたホテルに連れて行かれ、性行為を強いられた。

 裁判では性行為に合意があったかどうかが争点になった。判決は、伊藤氏が会食直後から千鳥足になるなど強度の酩酊状態だったと認定。「ホテルの部屋で性行為を受け、目を覚ますまで記憶がない」という伊藤氏の供述は信用できると判断した。

 さらに、性行為があった日に伊藤氏が医療機関を受診していたことや数日内に友人や警察に被害を相談していたことを重視し、「性行為は意思に反して行われた」と結論づけた。

 一方、山口氏については「伊藤氏が電車で帰る意思を示したのに近くの駅に寄らず、タクシー運転手に指示してホテルに向かった」と指摘。性行為前後の言動も、後日伊藤氏に送ったメールの内容と法廷での供述が矛盾しているなどとして、「信用性に重大な疑念がある」と判断。「性行為に合意はなく、伊藤氏が意識を回復して拒絶した後も体を押さえつけて続けた」と不法行為を認めた。

 山口氏は、伊藤氏の会見や著書で名誉を傷つけられたと反訴していたが、判決は「自らの体験を明らかにして性犯罪の被害者をとりまく社会状況の改善につなげようとする公益目的であり、公表した内容も真実だ」として退けた。(新屋絵理)

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