草ラグビー拒んだ父 トンプソン・ルークに継がれた哲学

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畑川剛毅
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 ひたむき、愚直、献身……。自己犠牲が求められるラグビーのフォワード陣の中でも、この人ほどこうした言葉が似合う選手はいない。ラグビーワールドカップ(W杯)日本代表、トンプソン・ルークさん(38)。父も優れたラグビー選手だったが、競技引退後は「草ラグビー」といえどプレーすることはなかった。息子のプレーにも通じる、その理由とは。

家族思い代表引退、でも

 ポジションはロック。背番号4。2004年に来日し、三洋電機(現パナソニック)、近鉄でプレー。10年に日本国籍を取得。それ以前から加わってきた日本代表では外国出身選手最多の71キャップを積み上げた。

 長い競技生活、家族の支えなしではプレーできない。子供は3人。かわいくてたまらない。取材当日も、196センチ、110キロの巨体でママチャリをこぎ、娘を送り届けてから練習にやってきた。本拠地花園ラグビー場での練習は、午前の部が終われば自転車で自宅に帰り、妻ネリッサさんの手料理を食べ、午後の部に戻るのが日課だ。

 長女と長男は、ラグビーが分かりかけてきた。練習が終わって自宅に戻ると「パパ、今日、ラグビーやった? タックルした?」「パスしました?」と抱きついてくる。いつもの試合の応援では「パパ、ガンバレー」だが、W杯期間中に2人は新しい日本語を覚えた。「ガンバレ! ニホン」

 ネリッサさんは、夫が出場した全てのW杯で、時に子供を抱えながら試合会場で雄姿を見届けた。ホテルも同じで、休み時間があれば子供と過ごした。最高のリフレッシュだった。

 15年W杯の後、家族への負担を理由に代表を引退した。だが18年6月の日本対イタリア戦、体を動かしながら前のめりに試合を見つめる夫に、ネリッサさんは言った。まだプレーしたいんじゃないの? もしホントにやりたいなら、私たちは全力で応援する。

 もう引退したんだ、家族といられてハッピーだ。そう返していたが、何度も話し合いを続け、前向きに。旧知のトニー・ブラウン日本代表コーチに電話をかけて、尋ねた。

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 「おじちゃんのロックは要る…

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