激動だけど平凡 2019年は「通常運転」な1年だった

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編集委員・近藤康太郎
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 ラグビーW杯が盛り上がり、参院選挙に盛り下がり、ピエール瀧沢尻エリカで驚き、「桜を見る会」にあきれ果てた2019年が終わる。元号が令和に改元され、消費税は10%に上がった。不安だけが募る、激動の1年だった……とお思いだろうか。ほんとうに? じつは平々凡々、たいしたことない1年なのではなかったか、という考察を。焦ったって、しゃあないし。

ゆるくつながる

 東京から電車と車で2時間、安房鴨川の棚田が広がる山あい、限界集落の古民家に「あわマネー」の事務局がある。千葉県南端、旧安房国のコミュニティーで流通する地域通貨。と説明するしかないのだが、いわゆる「おカネ」とはずいぶん違う。なんというか、ゆるいのだ。

 「通貨というよりツール。人間どうしが関係性をもつための道具です」と事務局の林良樹さんは語った。1awa(アワ)がだいたい1円くらい、と考える。たとえば林さんが自作の有機栽培の小麦粉を2400awaで知人に売る。通帳に「+2400awa」と自分で記帳する。その「おカネ」でパンを買う。整体マッサージを受ける。売り手と買い手で合意した値段を「-○○awa」と書き込み、精算する。

 アナログな手書きの通帳。だから、勝手に「+1億awa」と書き込むこともできる。「-10万awa」の負債を抱えたまま、どこかに姿をくらますことだって可能だ。

 「発足時に、運営委員会で危惧する声が出たこともあるんです。でも1億awaを勝手に書き込むなんて『あいつ馬鹿だな』って笑われるだけだし、こんな小さな地域通貨でさえ10万awaの負債で逃げるやつがもしいたら、かわいそうだから許してやろうよ。そう、大笑いになったんです」(林さん)

 これができるのは、みな顔を見知っている関係だから。あわマネーの会員は現在約300人。東京にも会員はいるが全員が移住予備軍。必要以上につながらない。

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 仮想通貨とは逆の発想だろう…

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