福島第一 戻ってきた風景、地元企業は挑む 真山仁さん

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真山仁のPerspectives:視線

 作家、真山仁さんが日本社会のいまを描く人気連載「Perspectives(視線)」。8回目のテーマは、東京電力福島第一原子力発電所。数々の小説で原発を描き、エネルギー問題をライフワークとしている真山さんは、廃炉作業の進む現場にいったい何を見たのでしょうか――。

 2011年12月16日。

 野田佳彦首相(当時)は、事故を起こした福島県の東京電力福島第一原子力発電所(以下イチエフ)が、「冷温停止状態にある」と宣言した。

 原発における冷温停止とは、原子炉に制御棒を挿入して核分裂を抑え、原子炉内の水温が100度未満になった状態を指す。

 「冷温停止状態」というのは、それに加え、「原子炉から大気への放射能の漏れを大幅に抑える」ことが可能になった状態だ。

 あの宣言から、今年で約8年になる。そこで12月5日、私はイチエフを訪れた。約4年半ぶりの再訪だった。

 多くの人にとって、イチエフの記憶は、水素爆発によって建屋の屋根が吹っ飛び、白煙を上げた時で止まっているのではないだろうか。

 そして、膨大な放射能の影響で人は立ち入ることもできず、いまだ事故の収束など到底不可能だと考えられているのではないだろうか。

 だが、事故が発生した瞬間から、イチエフは日々変化をし続けている。

 私は、08年に小説「ベイジン」を出版した。本作で原発の甚大事故を描き、18年には、甚大な原発事故を起こした電力会社投資ファンドが買収する物語の「シンドローム」を発表、エネルギー問題は小説家としての私のライフワークになった。

 初めてイチエフを訪れたのは、「シンドローム」の取材のためだった。頭まですっぽり包む防護服、全面マスクという物々しい格好での見学だった。

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 敷地内の土壌に染みこんだ放…

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