前田日明さんが語る日韓、在日 誇りと償いを名に込めた

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聞き手・太田啓之
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 元プロレスラー・格闘家で現在は格闘技イベント「THE OUTSIDER」のプロモートを手がける前田日明さんは、在日韓国人3世として生まれ、24歳の時に日本国籍を取得した。韓国名の「日明(イルミョン)」を今も、「あきら」という読みで名乗り続けている。かつて論語を朗読するCDを発売するなど儒教文化に傾倒する一方で、日本刀の収集など日本文化への関心も高い。日本の対米国依存を批判するなど政治的な発言を積極的に行ってきた前田さんに、韓国と日本、二つの国への思いを聞いた。

敵討ちのため来日した祖父

 ――前田さんにとって、かつての国籍だった「韓国」とはどんな存在でしょうか。

 「自分は日本生まれの日本育ちで韓国語もしゃべれない。正直言って、今の韓国に対しては『外国』という印象が強いです。ただ、朝鮮半島出身の自分の一族に対しては強い思い入れや誇りがあります」

 「父方の祖父は、朝鮮半島の高校の教頭で、母方の祖父は(李氏)朝鮮時代の最後の近衛兵でした。1895年に日本人公使や軍人らが朝鮮の王宮に押し入って閔妃が暗殺された後、祖父は「敵討ちに行く」と決意して来日した。親戚からそう聞いたことがあります。祖父が裸になると、体中に傷痕がありました」

 ――母方のおじいさんはどんな方だったのですか。

 「おっかない人でした。日本語は話せたと思うんですが、少なくとも自分らの前ではほとんど話さなかった。直接声をかけられたのはただ一度、日本語で『あきらは何歳になった?』と聞かれただけ。ただ、『日明』という名前は祖父がつけてくれたものです。朝鮮半島では非常に強い父系制なので、外孫の名付け親になることはまずない。珍しいことだと思います。理由は分かりませんが」

 「大人になってから、自分の一族に育って感謝することがいっぱいありました。例えば、自分はお年寄りにすごくかわいがられる。それは、目上の人に対する敬意と礼儀を欠かさない、という古い道徳を受け継いでいるからだと思うんです」

まえだ・あきら 1959年生まれ。新日本プロレス、第二次UWFを経て、91年に「リングス」を設立し格闘家、プロモーターとして活躍。99年、ロシアのアマチュアレスラー、アレクサンダー・カレリンと戦い引退。現在はアマチュアの格闘技大会「THE OUTSIDER」を主宰。

ひとくくりの「在日」、強い疑問

 ――なぜ日本国籍を取得したのですか。

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 「新日本プロレスに入り、海…

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