目覚めよ野性、丸ごとシカにライオン歓喜 でもトラは

宮沢崇志
【動画】動物園の肉食獣にシカ1頭プレゼント=宮沢崇志撮影
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 動物園の大型肉食獣に、毛皮や骨がついたままのシカを餌として与える企画が30日、豊橋総合動植物公園愛知県豊橋市)で実現した。自然界での食べ物に近い餌を食べさせることで、飼育動物をより健康にしようという取り組みだ。動物園生まれの猛獣は「野性」に目覚めたのだろうか。

 放飼場の扉が開くと、オト(ライオン・雌・20歳)はシカ肉に駆け寄った。4本の脚がついたままの重さ10キロのシカをくわえて運び、じっくりと表面をなめた。ときどき周囲を見渡しながら、骨をかみ砕く音を響かせて食べ始めた。

 「屠体(とたい)給餌(きゅうじ)」と呼ばれるこの取り組みは、飼育環境を自然の状態に近づけようとする活動の一環で、国内外の動物園が導入している。有害鳥獣として駆除された動物を適切に処理し、飼育する肉食獣に与える。感染症の危険がある内蔵と頭部は取り除き、一度冷凍してダニや寄生虫を殺す。その後、約60度で湯煎し殺菌する。今回のシカは九州で処理されたものだ。

 オトの食べっぷりを見て、豊橋総合動植物公園の獣医師吉川雅己さんは「普段の餌は馬肉や鶏肉ですが、明らかに喜んで食べている。おおむね予想通りの反応です」と話した。事前に試験的に与えた際も、いつもより興奮した様子だったという。毛皮や骨ごと食べるとゆっくりと消化するので、健康にも良い影響があるといわれる。オトの健康状態も良好という。

 オトの隣の放飼場では、アムールトラのマリン(雌・15歳)がひなたで寝転んでいた。今回、マリンにはシカ肉を与えるのをやめた。「事前に試験的に与えてみると、まったく食べず、シカを怖がるそぶりが見えたので中止しました」と吉川さんは説明する。「マリンは少し神経質なので、それが影響しているのかもしれません」(宮沢崇志)

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