「電力の課長を呼ぼう」飲み会の支払い回した 原発の町

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徳島慎也 志村英司 山本逸生
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 三陸の海を一望できる宮城県の牡鹿(おしか)半島の高台集落に、1軒の民宿がある。和風の建物の玄関には木製の看板が立てられ、7人が働く、きれいな宿だ。

 「従業員が泊まるために、民宿を始めてもらえませんか」。十数年前、東北電力女川原発構内の仕事を請け負う県外の機器製造会社の所長から、70代の男性はこんな依頼を受けた。女川1~3号機の定期検査の際に働く従業員が、長期間寝泊まりする場所を確保したいという。これを機に男性は民宿を開業。1年のうち数カ月使ってもらい、「稼働率は7割くらい」という。

 近くの集落の80代の女性も、1984年の1号機の営業運転開始に合わせて、夫と民宿を開いた。原発で働く作業員らが泊まってくれて繁盛した。娘も東北電力関連の職場で10年ほど働いた。

 原発は、敷地の大部分を占める女川町の税収に特に大きく貢献してきた。町によると、2017年度の町の固定資産税は27億円で、自主財源である町税の8割以上を占めた。電源三法交付金は80~18年度の合計で262億円。町立病院(現・地域医療センター)や総合体育館、陸上競技場スタンドなどが次々と整備された。

 11年の震災前まで町中心部で小売店を開いていた80代の男性は、女川を半世紀にわたって見てきた。水産業に勢いがあった頃は、処理した魚の血で湾内が真っ赤だった。「さらに原発が来て、人口が2万、3万と増えて、ゆくゆくは『女川市』になると思っていた」

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 「もう時効だけど」と断って…

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