拡大する写真・図版パリ航空ショーに展示されたスペースジェット=2019年6月、パリ郊外

経済インサイド

 三菱重工業グループが手がける国産初のジェット旅客機「スペースジェット」(旧MRJ)の開発が難航している。当初2013年としていた初号機の納入は5度延期。さらに「20年半ば」とする現在の目標についても、6度目となる再延期の可能性がささやかれている。なぜ、ここまで視界不良が続くのか。

夜通し続く作業

 名古屋市中心部から車で北へ30分。愛知県営名古屋空港(豊山町)のロータリーに入ると、「MRJ」と大きく書かれた建屋が目に入る。ここがスペースジェットの最終組み立て工場だ。

拡大する写真・図版最終の設計変更を反映したスペースジェットの試験10号機。米国での飛行試験に向けて配線の確認作業が続いている=2019年11月、愛知県豊山町、三菱航空機提供

 中ではラグビーコート1面分ほどのフロアに並んだ、三つの機体の組み立て作業が進んでいる。なかでも関係者が気をもむのは、「試験10号機」と呼ばれる機体だ。最新の設計変更を反映した初めての試験機で、航空会社に実際に納入する機体と同じ「最終形態」(広報)という。

 三菱重工傘下の三菱航空機の水谷久和社長は今年4月、この試験機を6月までには完成させる考えを示していた。が、その作業がいまだに終わっていないのだ。

 10号機に反映される設計変更のうち、時間がかかっているのが配線の見直し。一部の配線になんらかのトラブルが起きた場合でも操縦を続けられるようルートを分散させる、安全のための変更だ。機体内部に張り巡らされた配線は全部で3万本近い。現在は、正しく接続されているか1本1本確認している最中だといい、担当者が交代しながら24時間態勢で休みなく作業を続けている。

6度目延期、最大の懸念材料

 目下、6度目の納入延期がささやかれる最大の懸念材料が、この試験10号機だ。

 スペースジェットが実際に客を…

この記事は有料記事です。残り3273文字
ベーシックコース会員は会員記事が月50本まで読めます
続きを読む
現在までの記事閲覧数はお客様サポートで確認できます
この記事は有料記事です。残り3273文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
この記事は有料記事です。残り3273文字有料会員になると続きをお読みいただけます。