「宮崎駿の闇と光」という愛情に満ちた本(小原篤のアニマゲ丼)

有料記事小原篤のアニマゲ丼

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 ハーバード大学で三島由紀夫大江健三郎研究で博士号を取ったアカデミシャンが日本アニメの研究に熱心に取り組み、現在教授を務めるタフツ大でも宮崎駿作品に関するゼミを10年にわたり続けているというのは、ありがたく心強いことです。その人はスーザン・ネイピアさん。早川書房から「ミヤザキワールド 宮崎駿の闇と光」(仲達志訳)という400ページ超の大著を11月に出したので、読んでみました。いろいろ「あれ?」と思うところもありますが、基本的には宮崎アニメへの愛情と共感に満ちた本です。

 いろいろツッコみつつも(本欄はそういう性格なもんですから)、内容をご紹介していきましょう。

 「評伝」を目指した部分もあるようですが、基本的には監督作(マンガ「風の谷のナウシカ」含む)を順に追った作品論。2002年に中央公論新社から出たネイピアさんの「現代日本のアニメ 『AKIRA』から『千と千尋の神隠し』まで」(神山京子訳)は、かなりたくさんのアニメ作品に言及しつつも「そのジャンルの歴史を語るには、参照する作品がまだ少ないのでは?」という印象がありました。今回は宮崎作品に絞っており(更に時間をかけ研究を重ねた成果もあるでしょう)そういう「スキマ」はあの時ほどは感じません。

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 とはいえ、東映動画(現・東…

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