「国を守るため命捧げる」会社員も医師も 東欧の市民軍

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アウグストゥフ モスクワ=喜田尚 ブカレスト=吉武祐
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 11月24日日曜日の朝、ポーランド南西部ルブリニェツ近郊。林の中の小道を進んでいた完全装備の兵士たちの中から声が上がった。

 「コンタクト!」

 敵から銃撃を受けた際の合図だ。

1989年12月3日、当時のブッシュ米大統領とソ連のゴルバチョフ最高会議議長が地中海の国マルタで冷戦終結を宣言した。東欧が民主化し、米ソ軍縮交渉が進んだ当時、NATOとロシアの対立がここまで激化すると誰が想像しただろう。30年後の現実を検証する。

 先頭の2人が伏せ、自動小銃で応戦する構えを見せる。2列目の兵士は数十メートル後方へ。後ろの陣形が整うと、今度は先頭の2人が立ち上がり、かがんだ姿勢でさらにその背後に回った。

 急襲を受け、退却しながら瞬時に反撃の態勢を整える訓練だ。気温は氷点に近い。冷たい空気を切って兵士たちの「ハ、ハ」という息づかいが伝わってきた。

 訓練は前日土曜の午前6時に始まり、兵士らは一睡もしていない。未明までは真っ暗な森林で暗視装置を使った訓練を受けていた。

市民軍の創設、きっかけはウクライナ危機

 「領土防衛軍」(WOT)は、情報操作や住民へのマインドコントロールと軍事行動を組み合わせた「ハイブリッド戦」に対抗するため、ポーランド政府が2017年に発足させた。既存の陸、海、空軍、テロ対策などの特別軍と並ぶ組織と位置づけられる。

 9割が会社員、医師、自営業などさまざまな職業につく地元の志願兵だ。若者から40代まで、年齢層も散らばる。女性もいる。

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 初めて武器に触れる人が多い…

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