編集委員・副島英樹
拡大する 114年前と同じように高岸寺の本堂前で撮影した集合写真。エレナさん(左から3人目)、アンナさん(右から4人目)、草野さん(右から2人目)、セルゲーエフ総領事(右端)=2019年10月5日、金沢市寺町5丁目、副島英樹撮影
きっかけは1枚の写真だった。日露戦争(1904~05年)の日本海海戦で捕虜となり、金沢市の高岸寺に収容されたロシア海軍将校たちの集合写真。日ロの官民の協力で、このうち2人の子孫にたどり着く。114年の時を超え、ひ孫たちが同じ場所で写真に納まった。
秋晴れとなった10月5日朝、金沢市の高台にある高岸寺に、2人の女性の姿があった。アンナ・バルミンツェワさん(50)はモスクワから夫(56)と、エレナ・ポリャンスカヤさん(62)はサンクトペテルブルクから次男パーベルさん(31)と来日した。
アンナさんの曽祖父は、アレクサンドル・パブロフ少尉。エレナさんの曽祖父は、スウェデ・コンスタンチン・レオポルドビッチ中佐。2人は1905年、将校クラスの捕虜収容先となった高岸寺の本堂前で、集合写真に写っていた。
捕虜たちが暮らした広い和室は、ほぼ当時のまま。畳に座ったり、街が一望できる縁側から外を眺めたりして、2人は曽祖父たちの生活に思いを巡らせた。
アンナさんは「ここは景色もきれいで、捕虜への扱いも良かったと聞いています。でも、家に帰って家族といたい気持ちでいっぱいだったと思います」。エレナさんは「100年以上前にここに先祖がいて、いま私たちがいる。素晴らしい瞬間です。夢のようです」と感極まった。
この写真は、金沢市の写真スタ…