家庭や産業支えるLNG 輸入量は開始50年で世界最大

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桜井林太郎
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 日本が液化天然ガス(LNG)の輸入を始めてから11月で50年。今や世界最大の輸入国で、家庭や産業を支える重要な基幹エネルギーとなったが、そこには当時の経営者らの決断と、息の長い地道な取り組みがあった。中国の台頭や地球温暖化対策の強化など、次の50年に向けた課題も浮上している。

 「新しいエネルギーで失敗は許されない。興奮と緊張の連続でした」

 1969年11月4日、横浜市東京ガス根岸工場。若手社員として受け入れ業務に奔走した大沼明夫さん(78)は、初の輸入となる米アラスカ産のLNGを積んだポーラ・アラスカ号が岸壁につけたときを今も鮮明に覚えている。

 LNG輸入を主導したのは東ガスだ。都市ガスの原料は当時、石油や石炭から加工したガスを使っていた。熱量が約2倍の天然ガスに代替できれば、高度経済成長期の大幅な需要増に効率よく対応できるうえ、一酸化炭素が発生しないので中毒リスクもなくなる。

 ただ、LNGは液化時のコストや運搬費がかさむ。受け入れ基地などに巨額の投資も必要だ。東ガスだけでは輸入量が少なく、経済的に見合わない。そこで、東ガスの安西浩副社長(のちに社長、故人)は65年、東京電力の木川田一隆社長(故人)に共同購入を呼びかけた。

 LNGは硫黄酸化物を出さない。東電も大気汚染対策として石油火力からの代替を迫られていた。コスト高からほかの幹部は反対したが、木川田氏は「無公害に挑戦するという東電の未来に向けた経営ビジョンにかかわる問題だ」と最後は自らの責任で断行した。東電の火力事業を引き継ぐJERAの佐野敏弘会長は「LNG火力は前例がなく、決断は大変難しいものがあったが、今や電力会社にとって不可欠な燃料になった」。ほかの電力会社もLNG火力を導入し、今では日本でつくる電気の約4割をLNGが占める。

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 一方、都市ガスとして普及さ…

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