第1回読書家ヒトラーの教訓 いま、紙の本を育てる気概あるか

有料記事もうすぐ終わる紙の本

編集委員・近藤康太郎
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 「いますぐ出て行けということで、トラックの手配が間に合わず、知事室に置いていた行政関連などの書籍4千冊は捨てるしかなかったんですよ」

 任期途中で辞任した前東京都知事舛添要一(70)の事務所、半地下の書庫には、それでも英、独、仏語を含め、本がぎっしり詰まっている。特注の本棚が並び、部屋には小さなテーブルを置くのがやっと。「蔵書は1万6千冊くらいに減った。ちょうどヒトラーの蔵書と同じ数。これも天の配剤かなあ」と笑わせた。笑えないのは、「ヒトラーも大読書家だった」という事実だ。

 今年は第2次世界大戦開戦から80年。学生時代からヒトラー関連の文献を集め続ける舛添は「ヒトラーの正体」を出版した。世界を戦禍に巻き込み、ユダヤ人絶滅を本気で計画したこの誇大妄想狂は、浩瀚(こうかん)な蔵書をそろえ、読み込み、一部はそらんじていた。

 「ほとんどは戦記や軍事年鑑ですが、シェークスピア全集など西洋の大古典もあった。詳細な書き込みがあり、実際に読み込んでいたことがわかる。ただ、大学教育を受けていなかった劣等感から、むさぼるように、自分の好きなもの、わかるものだけ読んだ」

 ニーチェやショーペンハウエルも読んだ形跡があるが、「それもいいとこどり。自分の演説に都合のいい部分を頭に入れた」という。「教育には、いやなもの、何の役に立つのかわからないものも勉強させる機能がある。それが我流読書の解毒剤にもなっているんです。我流はいけません。いまのSNSが一番ひどいでしょ。自分の好きな、自分にわかる断片情報だけを読むんだから」

 「○○の中に満ち満ちている誤謬(ごびゅう)、でっちあげ」「○○は理性の光をもみ消す」「○○は自分の力で知識を獲得することを妨げる」

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 ○○に入る正解は、ところが…

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