帰らぬ愛犬…わかっていた 北海道、ある軍用犬の物語

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北海道テレビ放送・斉木徹晴 戸田拓
【動画】戦場に散った犬と飼い主の思いに迫る=朝日新聞、北海道テレビ放送共同取材
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 1939年。当時映画館で本編の合間に上映されていた子ども向けニュース映画「アサヒコドモグラフ」は、犬たちが中心の行進の模様を伝えた。晴れやかな服装に身を包んだ飼い主、多くの日の丸がはためき、紙吹雪が舞う市街地を、犬たちが練り歩く。

華やかな街を行進した意味

 「アサヒコドモグラフ」はナレーションで「戦地で兵隊さんたちの間にまじってたくさんの手柄をたてている軍用犬。これは、北海道のある街から出征した軍用犬たちの勇ましい姿です」と説明した。「ある街」とは当時、北日本有数の経済の拠点として繁栄した港町・小樽だ。

 映像には、軍用犬を盛大に送り出す出征の様子が描かれていた。撮影された80年前、イヌと飼い主たちは小樽の目抜き通りを行進。

小樽の総鎮守・住吉神社を出発して商店街を通り抜け、小樽駅に至るコースだった。

 小樽市総合博物館の菅原慶郎学芸員は、撮影されたロケーションについて「商店街が一番あり、人の集まっている繁華なところ」といい、そういう場所を選んだことに「犬たちを戦争に送り出すことの本質的な意味があるのではないか」と話す。国を挙げて戦争に向かう「機運」を盛り上げる意図のため、犬たちはもっとも華やかなコースを歩んだというのだ。

和服の女性、ひざにシェパード

 その3年後の1942年。まだ写真を撮ることが特別な機会だった時代、札幌・円山の有名写真館で撮影された1枚の画像に、和服を着た女性のひざに前足を乗せたシェパード犬が写っていた。この犬もまた、戦場に送り込まれることになる軍用犬だった。

 10月、JR仁木駅(仁木町…

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