論説委員・伊藤裕香子
消費税の税率が10%に上がった10月以降、むしろ安く買えた、と思うことがある。「CASHLESS」と書かれた赤いポスターやのぼりのある店に行けば、「減税」されるからだ。キャッシュレス決済でのポイント還元と呼ばれるこの制度、「国の予算のばらまき」と批判してきた私も、この1カ月でかなりの還元を受けていた。それで、よかったのか。
ポイント還元は受けない、そう決意していたはずだった。
増税直後の10月1日午前0時すぎ、財務省では、省内のコンビニエンスストアで買い物を終えたばかりの官僚たちがいた。
レシートには、ビタミン入り炭酸飲料に、軽減税率8%を示す「軽」の文字。「キャッシュレス還元 ¥4」ともある。
「え、さっそく、ばらまきに便乗するんですか」と口走った手前、自分は還元からは距離を置いて踏ん張ろう、と思った。
ポイント還元は、クレジットカードやスマートフォンのQRコードなどで買い物をすると、受けられる。コンビニなどのフランチャイズ店では税込み価格の2%分、ほかの中小の店では5%分が、ポイントや値引きの対象となる。
増税からの9カ月間、消費の落ち込みを防ぐ目的で、政府が期間限定で始めた。このポイントや値引き分は、国の予算、すなわち税金で埋め合わせる。
政府が検討を始めた昨秋から、私は批判する社説を書いてきた。使えるキャッシュレス手段は人によってさまざまだから不公平だし、国の財政は厳しいと増税を求める一方で、実質的に減税する矛盾も、気になったからだ。
ところが、増税から5日目、私の決意は早くも崩れた。
ときどき行くネイルサロンに入…