山あいのタピオカ屋を襲った災厄 行列店になった矢先に

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荒ちひろ 山本逸生
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 山あいの町にこの夏、一軒のタピオカ専門店がオープンした。作り手は平均年齢68・5歳という地元の「タピオカレディーズ」。地元産の米粉や牛乳を使ったドリンクは人気を呼び、1万3千人が暮らす町で2カ月の間に1万2千杯超を売った。ところが――。

 町役場のそばにある専門店の名前は、町名とタピオカ粒にひっかけて「どっと堂」という。

 手作りのタピオカをミルクティーと合わせ、仕上げにかけるソースは地元の桑の葉茶かベリー、黒糖はちみつのどれかを選ぶ。

 「レディーズ」の一人、伊藤佐津子さん(72)はかつて、この町で一品料理屋を切り盛りしていた。7月、どっと堂を運営する地元企業の関連会社に勤める息子から、タピオカ作りの仕事に誘われた。

 テレビで見たことはあったが、タピオカのことはよくは知らない。それでも「この年になって、人の役に立てるような仕事ができるとは」と近所の友人にも声をかけ、元保育所の調理室を改装した「工場」で働き始めた。

 原料のタピオカ粉に黒糖や米粉などを混ぜ、火にかけて……。マニュアルはあるが、生地の柔らかさは天気によっても変わり、形を丸く整える機械がうまく動かなくなることもある。その微妙なさじ加減に元料理人の勘が生きた。

 作ったタピオカを生まれて初めて口にした。ムニュムニュしていて、切れそうで切れない。未体験のかみごたえに、「これがはやっているのか。この食感なんだな」と納得した。

 地元産の手作りタピオカはたちまち人気の的に。週末には30メートル近い行列ができた。「どのくらい並んでいるか見に行かない?」と、自宅から車で10分の店まで何度も夫を誘い、「私も携わっているのよ」と鼻を高くした。

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 そんな矢先の10月。レディ…

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