孤立の末の死は不幸じゃない 「星守る犬」作者の反論

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権敬淑
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 2009年に単行本になった漫画『星守る犬』。物語は、主人公の「おとうさん」が白骨化して身元不明の「行旅死亡人」として発見されるところから始まる。

 不況下でリストラにあい、持病を抱え、妻と娘にも去られた中年男性が、愛犬と気ままな車の旅に出る。所持金もガソリンも尽きたとき、たどり着いた野原が終(つい)の場所だった。彼は身元の痕跡を消し、愛犬に見守られて永眠する。

 切ない最期には違いない。

 「でも、決して不幸ではなかった」と、作者の村上たかしさん(54)は言う。

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 この物語の種は、村上さんが数十年前に見た大阪駅近くのビルの電光掲示のニュースだという。「廃棄車両に男性の遺体。足元に犬の遺体も」。限られた字数になぜ犬のエピソードまで入れたのか。心に引っかかった。

 村上さん自身、小学生のときに両親が離婚し、経済的にも、家族関係でも、恵まれていたとは言いがたかった。若い頃は、いつも根無し草の思いがあった。

 でも、犬はいつも忠実だった。「足元の犬」にひかれたのは、そんなことも影響したのかもしれない。

 「孤立しても、かわいそうとは限らない。心の持ちようで、満足していたのかもしれない」。その思いを素直にぶつけたのが『星守る犬』だった。

 「おとうさん」は誠実に働き、目の前の弱者を助けた。切れ者ではないが悪人でもない。不況で生活を、連鎖して家族を失っただけだ。みとる人はいなかったけれど、最期まで、その後までも、愛犬が一緒にいてくれた。

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 だから、リーマン・ショック

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