外資系で部下から無視 「人生の棚卸し」で見えた居場所

有料記事カイシャで生きる

古屋聡一
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 大手生命保険会社から外資系金融機関に転じ、日本法人の社長に。MBA(経営学修士)や米国公認会計士の資格を持ち、世界を駆け回るビジネスパーソン――。

 エリート街道のど真ん中を歩き、さぞかし自信に満ちた雰囲気の人なのではないかと記者は想像していた。でも、取材で実際に会ってみると、語り口はどこまでも控えめ。自己評価は「私は要領が悪く、不器用な人間です」。そんな人物が52歳にして自ら社長の座を降り、新しい居場所を探す旅に出た。50代の自分を突き動かした「志」とは。

すぐにサボろうとする性格

 その人物は、岡村進さん(58)。第一生命から、スイスの金融大手、UBSの資産運用部門の日本法人、UBSグローバル・アセット・マネジメント(現UBSアセット・マネジメント)に転職。社長を務めた。いまは人材教育のベンチャー企業「人財アジア」の社長として、グローバル人材育成のための予備校を開いている。

 資産運用会社の業績は好調で、社長の地位は安泰だった。でも、岡村さんの心の中の声は、こうささやいていた。

 〈社長の椅子に居続ければ、安住してしまい、自分が本当にやりたいことを見失ってしまうのではないか〉

 楽な状況に置かれると、すぐにサボろうと考えてしまう性格だと、若いころから自覚していた。努力をして成長を続けなければ、幸せは自分の手から離れていってしまうのではないか。そんな思いをずっと抱えていた。これまでも、自分で大きな環境変化を起こすことで、自分を追い込んできた。

 社長時代はハイヤーでの送迎は断り、自宅から最寄り駅まで自転車で通勤した。飛行機はエコノミー。とにかく、境遇に甘え、調子に乗って易(やす)きに流れてしまうことが怖かった。

職場の中に居場所はありますか? パーソル総合研究所がミドルシニア世代に聞いたところ、「私は必要とされている」と答えた人は42%、「私は人の支えになっている」は34%、「私は人に好感を持たれている」は31%。浮かんだのは低い自己評価でした。転職先で苦境に立たされた岡村さんは、ある試みによって活路を見いだしました。

 外資系トップの椅子をあっさり捨てた。いつかは人を育てたいという夢を追うために。

他の就活生からこっぴどく批判

 引きこもりになっていてもおかしくない、紙一重の就職活動だった。

 学生時代、岡村さんはやりたいことが見つからない自分に悩んでいた。そんな迷いを見透かされ、就職試験を受けても不採用の連続だった。時間だけが過ぎていった。

 自分は一体、何をしたいのだろう?

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 「社会の役に立てれば」とい…

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